23-1


店舗数の推移は上記記載のように、
10年:331店舗
11年:350店舗
12年:355店舗と店舗数は増加傾向にあります。

一方、店舗運営コストは、
10年から11年にかけては1,347億円から1,442億円と+7.0%増加していますが、
11年から12年にかけては1,442億円から1,387億円と▲3.8%減少しています。
毎年店舗の損益構造が同じであれば、店舗運営コストは、店舗数に応じて増減します。
しかし、店舗数は増加しているものの、コストは減少している。

11年から12年にかけて、店舗数が増加している中で、コストが減少しているということは、どこかでコスト削減努力をしているということです。
それはどこなのか?
どういうインパクトがあるのか?
肝心の売上(顧客に提供している価値)を落とすという、デメリットが発生していないのか?


再び、ホール運営コストの内訳を見てみます。
23-2

こちらを前年比と増減を取ったものにしてみますと下記となります。
23-3


店舗数を増加させている中では、全体的にコスト削減をしている感じがします。
売上が全体的に減少しているなかなか苦しい状況の中、
「コスト削減せい!」の号令がかかっているんでしょう。
コストのうち、
支払賃料なんかの固定費は数年の賃貸契約を締結しているので、削減交渉が難しい。
人件費はある程度固定的に発生するが、店舗数の増加とともに増加はやむを得ない。
減価償却は固定資産投資の結果であるため、削減は短期的には考えにくい。


大きくコストを操作できるとしたら、
・出玉率(IFRSでは売上に含まれているGross-pay out)
・パチンコ台投資費用
・広告宣伝費
の3つでしょう。
やっぱり、これを増減しています。


一般的にはパチンコ台投資費用や、広告宣伝費は、短期的には利益に結びつきにくいコストです。
ですので、11年度から12年度にかけては上場を目前に控え、
できるだけ利益が出ているように見せるため、投資を絞ったのではないか?と推測されます。
パチンコ店は広告宣伝費は、比較的短期的な利益には結びつく気がするので(なんとかフェアとか言って)、
そこまで削減せず、パチンコ台投資を削減したのかもしれません(1年はそのまま使えますからね)。

ただ、気を付けるべき点としては、投資を絞ると、次年度以降の利益に影響が出てくる可能性があるということです。
つまり、パチンコ台の投資費用や広告宣伝費を削減すると、短期的な利益には直結するものの、
ノンプロのお客さんの飽きが来て、足が遠のいて結果、売上減少に陥るリスクを孕んでいます。

某メガバンクに勤める友人から、パチンコ産業への貸付は締めつけていると聞きますし、
それは資金が絞られている中で、このバランスをどうとるか・・・
このバランス感覚が難しいだろうなぁ・・・と感じており、研究対象に面白そうだと思います。


近い遊戯業界のゲームセンター業界は、ネットゲーム等の台頭に対抗するため、
ネット通信を含む設備投資の大型/多額化、店舗の大型化を経て、
ゲームセンター側の投資キャッシュが疲弊し、
ヘビーユーザー以外には飽きられ、
結果、ゲームセンターが、投資キャッシュが軽いUFOキャッチャーばかりになり、沈んでいく…
という悪循環が起きてしまいました。
パチンコ業界も、業界全体が沈んでいかないことを祈っています。